「鋼×想=力」特集
食品工場・事務所8棟に『スタンパッケージ®』【前編】
山田水産様インタビュー

2020年8月7日

ご安全に!

今回は、九州地方でうなぎ加工卸売、水産物、餌料加工卸売を展開されている山田水産株式会社様の事例を紹介します。山田水産株式会社様には1992年から現在まで、8棟の工場・事業所の建設において当社のシステム建築商品『スタンパッケージ®』をご採用いただきました。

同社の鰻事業担当・建設工事責任者の上杉利幸様に、ものづくりへのこだわりや食品工場に込めた思い、店舗併設の志布志工場の事例や東日本大震災で被災した石巻工場の復興プロジェクトなどについて伺いました。志布志工場(鹿児島県)で行なった、インタビューの模様を、前編・後編に分けてお送りします。

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[語り手]左:上杉利幸様(山田水産株式会社 常務取締役)、右:岩田正幸(日鉄エンジニアリング/都市インフラセクター 営業本部 建築営業部 システム建築営業室 室長) ※以下、敬称略とさせていただきます

introduction

山田水産株式会社様は、1973年に大分県佐伯市で創業。豊かな自然と水源に恵まれた大分、宮崎、鹿児島を拠点に地域密着型の冷凍餌料、水産加工に取り組んできました。1997年には、地下伏流水が豊富な志布志市有明を養鰻場の地としてうなぎ事業をスタート。1999年には隣接地に鰻の加工場(有明事業所)を建設。翌年には投薬なしでの養殖に取り組み、「無投薬うなぎ」を商品化するに至りました。「鹿児島産無投薬うなぎ」は大手量販店のブランド商品に採用されるなど,量販店を中心に販路を拡大。『安心・安全・美味しい』のこだわりにより鰻製品の販売量は年々増加し,出荷量は全国トップクラスとなっています。

レストラン併設の食品工場建設は初の試み

編集部:山田水産様には、1992年着工の垂水工場(鹿児島県)から、長きにわたり『スタンパッケージ®』をご愛用いただいております。中でも、志布志工場は、唯一店舗併設という珍しい事例です。まず、建物の概要について教えてください。

上杉(山田水産):2016年11月に着工した新工場です。敷地面積約18,000㎡の土地に、自社工場と鰻料理のレストラン・直売所「うなぎの駅」をオープンしました。

レストラン事業の実績はありましたが、店舗と工場が一緒になった施設というのは、初めての試みでしたね。当初は、うなぎの真空パック用のラインを増設する計画でしたが、事業の拡大に伴い、フライ加工食品も生産しています。店舗の方は、直売所をイメージしていたのが社食もあったらいいねという話になり、最終的にレストランになり......というふうに、計画段階からどんどん規模が大きくなっていきました。

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志布志工場(うなぎの駅)。水産加工工場とレストラン・直売所を隣接して美味しいうなぎを提供

地元愛とものづくり精神が美味しいうなぎを育む

編集部:うなぎの駅を作ったのは、地域からの要望もあったからと伺いました。

上杉:ええ、鹿児島県志布志市はうなぎの養殖、加工が日本でも有数の地域です。しかし、地元にはうなぎを食べられる場所がほとんどありませんでした。市役所から、美味しいうなぎの店を作ってくれと頼まれ、社長が「やるぞ!」と即決でしたね。

岩田: 私は、この志布志工場から山田水産様の営業担当になりました。当社は材料供給会社としての参加です。『スタンパッケージ』は建物の形状だけでなく、屋根や外壁、室内環境についても豊富なバリエーションがあります。

「うなぎの駅」のシンボル的なアーチ状の屋根は、山田社長がいたく気にいってくださいました。駐車場は普通自動車90台、大型バス10台が収容可能。地元の方や観光客でいつも賑わっていて、我々もうれしいですね。地元産業や雇用にも大きく貢献する施設ですよね。

上杉:そうですね。毎年秋にはサンマ祭りを開催するのですが、4000人が集まる観光拠点となっています。

編集部:レストランでいただいた「無投薬うなぎ」は、ふっくらとして本当に美味しかったです。

上杉:隣接の有明工場からの直送です。水がきれいなところで育てるからこそ、美味しく元気なうなぎに育つのです。工程も独自開発し、白焼き、蒸し、焼き4回、瞬間冷凍と、解凍して食べることを前提にタレや焼き方まで研究し尽くして、美味しく仕上げています。一貫して「メイド・イン・ジャパン」「美味しいものをつくる」ということにこだわり続けています。

作業空間を広くとり、生産ラインの入れ替えをスムーズに

編集部:工場を見学させていただいて、とにかく広くて驚きました。通路や休憩室、工場のラインにもゆとりがあり、従業員の方にとっても働きやすい職場ですね。食品工場なのに食材の匂いや、機械音なども気になりませんでした。

上杉:そうですね。休憩室も明るく開放感があって従業員に好評です。志布志工場では、フライ商品だけでも、サバ、イワシ、アジとさまざまな魚を扱います。季節ごとに魚種が変わりますので、その都度機械やラインの入れ替えをスムーズに行う必要があり、ラインごとのスペースを広くとっているのです。

編集部:工事で苦労された点はどのようなところになるのでしょう。

岩田:最初の計画から5倍ぐらいの規模になった一方で、当初の工期(2017年竣工)で完成を目指していましたから、現場では色々な苦労がありましたね。

また、我々が普段から手馴れている工場計画ではなく、一般の方も使われる建物(公共性の高い建築物)ということで、様々な規制がありました。行政との協議や許可取得にも時間がかかりました。

上杉:オリンピックが迫っていたこともあって、職人不足と材料不足の影響も受けました。建設現場は、もともとは焼酎の原料になるサツマイモ畑だった土地。大型重機が入らなかったり、近隣住民対策で防音壁を入れなければならなかったり。防音壁は、通常納期が半年くらいかかるものなのですが、岩田さんが2週間ぐらいで手配してくださった。日鉄グループのネットワーク力には素晴らしいものがあります。

岩田:当社はもともと新日鉄(当時)の社内部門として発足しました。このため、現在も調達に関しては日本製鉄のグループ力を活用した安定調達が可能になっています。地元に貢献するという山田水産様の思いに共感し、プロジェクトを進めてきましたので、貢献できたことをうれしく思います。

上杉:おかげさまで、うなぎの駅と志布志工場は住民の皆さんに好意的に迎えられています。砂埃が立たなくなってよかった、衛生的になったと喜ばれています。

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地中梁の要らない基礎システムに社長が惚れ込んだ

編集部:話はさかのぼりますが、当社とのお取引は、1992年に山田水産様が新規事業としてうなぎの養殖に着手、施設建設のため養殖に適した鹿児島県に進出の際に当社システム建築を採用いただいたのがきっかけです。『スタンパッケージ®』のどこが魅力なのか、採用し続ける理由を教えてください。

上杉:御社のシステム建築を、社長の山田が高く評価しているという点が大きいですね。1990年代、山田がシステム建築先進国のアメリカで見てきた技術を日本で探していたときに出会ったのが『スタンパッケージ®』。垂水工場建設の際に、初めて採用しました。地中梁の要らない基礎システム(パックFシリーズ)や継ぎ目なしのボルトレス屋根は、社長の大のお気に入り。それ以来のお付き合いですね。

あとは、人として信頼できるかどうか。当社のこだわりや目指すもの、要求するレベルは相当高いと思いますが、「難しい、難しい」といいながら、なんとか力になろうとしてくれます。「できません」と手放すのではなく、一緒に知恵を絞ってくれます。現場はチームとして動きますのでね。会社は違えど、やる気のある人が集まってくれているというのがうれしいですよね。思いを必ず形にしてくれる、というところが大きいでしょうね。

岩田:ありがとうございます。 当社に信頼をおいてくださる背景には、当社営業マンのレベルもあると思いますが、商品力もなければなかなか維持できないと感じています。現在のモデルは、この30年間で4段階もバージョンアップしています。

山田水産様のシステム建築の実績
1)垂水工場 鹿児島 /9,000㎡ /1993年竣工 スタンパッケージ4(以下SP)
2)根占工場 鹿児島 /3,000㎡ /1996年竣工 SP4
3)浦代工場 大分  /2,000㎡ /1998年竣工 SP5
4)有明事業所 鹿児島 /4,500㎡ /1999年竣工 SP6
5)石巻工場 宮城  /6,500㎡ /2009年竣工 SP6
6)石巻第2工場 宮城  /3,600㎡ /2013年竣工 SPR
7)志布志工場 鹿児島 /6,800㎡ /2017年竣工 SPR
8)石巻冷凍倉庫 宮城  /5,200㎡ /2019年竣工 SPR(現行)

上杉:日鉄グループですから、技術力や品質は良いもので当たり前だと思っています。その上で、スタンパッケージは工期が早く低コストという点も素晴らしい。今回は規模が大きくなったということもあって、ややコストはかかりましたが、当初目標の5月で、9割近く完成していましたからね。

岩田:上杉さんは食品工場の立ち上げをいくつも担当され、経験豊富でいらっしゃる。例えば通常の200%ぐらいの力を求められ、我々が「できないでしょうね」と言っても、不思議と最終的には150%ぐらいまで力を出せているということがありますね。いや、でも本音では、なかなか厳しいですよ。

ただ私としては、山田水産様の地域への貢献意識、地元で雇用するのだという企業理念にも深く共感しています。志布志工場では、お客様と請負者である施工店との間にあって、中立的な立場で双方の利益をバランスとって動けるように振舞えたことが良い結果に結びついたと感じています。

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一貫して変わらない、国内加工・地元雇用・水へのこだわり

編集部:地元愛が本当に素晴らしいですね。美味しいうなぎを提供しつつ、地元で雇用を生んでいくという。コスト面からいえば海外に工場を作るという選択もあると思うのですが。

上杉:繰り返しになりますが、もともとの社長の方針が「メイド・イン・ジャパン」なんですね。国内加工・地元雇用。水が豊富できれいな地元鹿児島、大分で養殖し加工するからこそ、初めて美味しくなるのです。経営的に考えればコストアップになります。でも、不味いものをどれだけ作っても最終的には売れません。

編集部:今後の展望についても教えてください。

上杉:コロナ禍でも、かえって需要が伸びているくらいで、当社の事業は好調です。うなぎは毎日食べるものではありませんが、冷凍フライはさまざまな商品があります。自粛生活の中で、美味しい冷凍食品があれば家庭も助かりますよね。志布志工場ではフライ商品の生産ラインをさらに充実させ、純国内加工を目指していきます。

これまで、鯖の骨取りだけは手作業でした。国内でやるのは難しく、ベトナムなどアジアの国で行なっていたのです。ようやく骨取り機械の導入の目処が立ち、この問題もクリアできそうです。また一歩、夢の実現に近づきます。

岩田:食品業界は、安全・安心・美味しいが求められますし、今のような状況にあっては、なおさら国内加工が消費者に求められていると思います。当社としても、日本国内に工場を作ってくださるお客様を大切にしたいと考えています。

山田水産様はスタンパッケージの歴史とともに、一緒に歩んできてくださったお客様です。重要な設備投資に採用していただき、その設備投資の稼働によって事業が成功し、さらに事業拡大で繰り返しご採用をいただく。このような関係は本当にありがたく、まさにこうしたお客様との信頼関係が作れるような活動を、我々は日々目指しています。

上杉: 現在もう一つ新プロジェクトが動いています。着工も控えていますので、引き続きよろしくお願いいたします。

次回は、東日本大震災の際にいち早く工場を立て直し地元雇用に動いた、山田水産様の石巻工場の復興プロジェクトについて、詳しく伺います。

インタビューが行われた志布志工場は、鰻料理のレストランや売店を併設した新工場。水産品のフライ・真空加工ラインを備え加工品を出荷。工場直送の蒲焼を食べることができるレストランとして、志布志市の観光拠にもなっています。

https://yamadasuisan.com/unaginoeki/

案件概要 志布志工場(うなぎの駅)

所在地 :鹿児島県志布志市志布志町志布志1286-8

構造規模:鉄骨造 地上2階建

建物用途:工場、事務所、店舗

建築面積:約6,800㎡

敷地面積:約18,000㎡

設計施工:元請 久徳建設(地場GC)

下請:松永工業 

工期  :2016年8月〜2017年7月

山田水産様WEBサイト https://yamadasuisan.com/

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