「鋼×想=力」特集
長崎県内で当社初の中規模オフィスビルを竣工!

2019年2月27日

ご安全に!

新日鉄興和不動産株式会社より受注し、2019年1月末に竣工したオフィスビル「長崎 BizPORT(ビズポート)」の事例を紹介します。

同事業は、長崎県が推進する「長崎金融バックオフィスセンター構想2020」(※)に基づき、長崎食糧倉庫が保有していた倉庫跡地に、オフィスビルを建設するというものです。施主、テナント企業様、地元自治体からも高い評価を得ている当ビルの特徴、完成までのプロセス、建物に込めた想いなどを、プロジェクトメンバーとともに振り返ります。

※2020年度までに長崎港ウォーターフロントに金融機関のバックオフィス機能等を誘致・集積させ、新たに2,000名を超える雇用の創出を目指すもの

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左から、安田健太郎(九州支社/長崎BizPORT設計統括者)、吉田裕(九州支社/長崎BizPORT作業所所長)

長崎港を囲む中核エリアに 長崎市では20年ぶりのテナントビル誕生

編集部:はじめに、今回の受注の経緯を教えてください。

吉田:現場担当の吉田裕です。本件は、JR 長崎駅周辺で進められている再開発を見据え、長崎食糧倉庫の保有する土地をオフィスビルに建て替える事業です。もともとは、長崎県が打ち出した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づく施策「金融バックオフィスセンター構想」があり、これを受けて、地主(長崎食糧倉庫株式会社)が土地活用を長崎県産業振興財団に相談。この民間誘致開発のスキームの構築を依頼されたのがきっかけです。

編集部:その後、新日鉄興和不動産をデベロッパーとして、計画が進んだのですね。

安田:はい。主に県外からの企業誘致を想定した中規模オフィスビルの建設ということで依頼があり、計画が進みました。2017年7月に着工し、2019年1月末に竣工、引き渡しとなりました。県は、以前から県外からの企業誘致を想定したオフィスビルの事業化を検討してきましたが、県主導では開発スピードやビル運用・維持管理の問題など様々な課題があったようです。今回は、民間企業主導の開発であり、長崎市では20年ぶりのテナントビル建設とあって、地元の注目度は高かったですね。当ビルは、JR長崎駅から徒歩8分、県庁からも近く、交通利便性の高い立地となっています。

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  左から、長崎BizPORT(夜)、夜景で有名な稲佐山からの景観

テナント様ニーズに応え レイアウト自由度の高いオフィスを実現

編集部:本件は、金融バックオフィスセンター構想の第一号案件とのことで、自治体や施主の期待も高く、要望も様々あったと思います。設計担当の安田さんに伺います。このビルの一番の特徴・魅力は、どのようなところになるでしょう。

安田:まず、オフィス運用に適したフレキシブルなフロア設計が挙げられますね。各階のワークスペース面積は約300坪。テナント様ニーズに応じ、フロア単位での賃貸に対応したビルとなっており、サービスコアを「コ」の字形に取り囲むレイアウトになっています。すべての区画を無柱空間にすることで、レイアウトの自由度を高めています。また、都心の賃貸オフィスビルとは違って、地方では大企業が入居するとは限りませんので、最大8分割の小割りにも対応でき、様々な状況、用途・ニーズに対応しやすくなっています。

編集部:核テナントがコールセンターと伺いました。その点で設計上こだわった部分はありますか?

安田:はい。本ビルには、核テナントとしてオリックス生命保険株式会社が入居されることが決まっていました。コールセンターのように女性従業員が多い職場ですと、トイレの数が足りなくなることもあります。そこで、男女構成比率に応じて、トイレの器具配置をフレキシブルに変更することができる設計にしました。他にも、天井に埋め込み型の加湿器を設置するなど、密集度が高いオフィスでも快適な環境を保つ工夫をしています。

編集部:なるほど、働く人にとっても優しいビルなのですね。

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非常時には72時間電力供給が可能 憩いのスポットとしての機能も

安田:当ビルは、金融バックオフィスということで、災害対策BCPにも配慮しています。停電時には、共用部で72時間の電力供給が可能です。屋上には、テナント様の発電機スペースも確保しており、発電機を設置していただくことで、オフィススペースでも最大72時間の電力供給が可能です。各階には非常時の防災用品も備蓄します。

編集部:最新の防災設備が完備されているのですね。内覧させていただきましたが、眺望も素晴らしいですね。

吉田:ええ、ビルの西側からは長崎港の向こうに、夜景で有名な稲佐山を正面に臨む景観が楽しめます。窓は足もとから天井までガラス面をとり、明るく快適なオフィス空間となっています。また、西日による空調負荷を考慮して、断熱性の高いガラスを採用しています。

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屋上からの景観

編集部:建物全体の設計については、特に苦労した点はありますか?

安田:まず、いかにして土地のポテンシャルを使い、事業性が高い建物にするかということに注力しました。本件では、総合設計制度を活用し、居住空間については、細く高く建てることで容積率を増やしました。賃貸物件を建設するにあたり、レンタブル 比(延床面積に占める収益部分の面積比率。賃貸面積÷延床面積で計算され、これが大きいほど収益性が高い)という評価数値があるのですが、通常は75~80%程度なのに対し、長崎 BizPORTは82.5%という高い数字を実現しています。

編集部:それはすごいですね。総合設計制度とは、敷地周囲に公開空き地を設けることで、特定行政庁の許可により、容積率制限や斜線制限、絶対高さ制限が緩和される制度のことですね。

安田:ええ。今回は、「市民にとっても、長崎のランドマークになるような象徴的な建物に」というご要望もありました。そこで、総合設計制度の活用で、敷地を広く取れたので、建物周囲のオープンスペースを広くし、地域の皆様の憩いの場になるよう、海辺の屋外スペースには、テラス風のウッドデッキや休憩などに使えるベンチなどを設けています。外観は、視認性や意匠性の高いデザインを目指して、縦スリットサッシによるシンプルで明快なデザインに仕上げました。

吉田:海岸通に面したスペースは、実際に歩いて楽しい、気持ちのいいスペースですよ。長崎県産の杉の間伐材を使ったりして、木材や石材を街並みと合わせることで、長崎らしさも意識しています。長崎は夜景も有名ですから、屋上にはライトアップも施し、長崎の景観美にも寄与しています。新しいいシンボルとして、存在感ある建物に出来上がったと思います。長崎にお越しの際は、ぜひ足を運んでいただきたいですね。

「無足場工法」で 工事現場をオープンに

編集部:今回、工事の現場については、どうでしたか?

吉田:当社としても、長崎での初案件ということで、これまでにない工法を検討しました。その1つが「無足場工法」です。足場を組まずに外壁を貼るのですが、それには安全に作業が行える、材料の取付け方や仮設施設を検討しなければなりません。事前に見本品を作り、吊る為の仮設用具を検討するなど、細部まで慎重に計画する必要がありましたが、結果的には正解でした。

編集部:無足場工法で行うことで、どんなメリットがあるのですか?

吉田:周囲を囲われている工事現場ですと、一般の人は中で何が行われているか全く見えませんよね。対して、無足場工法で行うと、ビルが出来上がっていく様子を市民の皆さんにも見ていただくことができるんです。建設地は県庁から見える場所にありますから、これがとても評判が良くて、やった甲斐がありました。同時に市街地ということで、周辺の店舗などに丁寧に説明したり、周囲に花を置いたり、工事用の囲いに小学生の絵を飾ったりと、工事現場でも優しい雰囲気が出るように配慮しました。とにかくブラックボックス的な工事現場にはしたくなかったんですね。工事の進め方にも色々なバリエーションがあり、頭を悩ませることもありましたが、やりがいのある現場でした。

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編集部:工事自体はスムーズに進みましたか?

吉田:地中工事の際、地盤下の旧長崎臨港線の石積み撤去に時間がかかりましたが、概ね問題なく進みました。今回、全業者の4割は長崎の地元の業者さんにお願いしており、時折交流会なども行ったりして、現場の雰囲気も良かったです。

安田:本当に、スムーズに進みましたよね。長崎は地形に坂が多く、歴史深い町。今回は地盤下の情報が少なかったので、事前の土地調査に費用と時間をかけましたが、それも奏功しましたね。

吉田:ええ。他にも、今回の案件は貸しビルなので、オーナー様やテナント様から、あれはできないか、これはどうかと、追加の要望がたくさん出ました。でも、設計の安田さんがうまく折衝してくれて、下慣らしをしてくれた。おかげで、工事もうまくいったと思います。営業・設計・工事がうまく連携できたことで、納期・品質の確保に繋がり、お客様からの信頼が得られたと感じています。

安田:施主側の品質検査担当の方に、最後の検査が終わった際に「こんな良い現場はない」と言われたときは嬉しかったですね。

工場や物流施設建設で培った カスタマイズ力が強みです!

編集部:今回の案件で、当社としてはどんな技術、ノウハウをアピールできたと思いますか。最後にメッセージをください。

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安田:我々が工場や物流施設建設で培ってきた「合理的に作り込む」というノウハウを、十分に活かせたと思います。当社は物流施設、産業施設を数多く作ってきましたが、工場というのは様々なオペレーションがあるので、お客さんと細かい部分まで何度も話し合いながら、レイアウトや仕様を固めていきます。鉄骨構造でいかに効率的にお客様にご満足頂ける建物に仕上げるかが我々の得意とするところですが、本件の例では、例えばビルの外壁は、汎用性のある材料を効果的に使ってデザインの魅力度を高めています。こうした工夫を積上げることで、建物全体として、品質と経済性を両立させたオフィスビルが完成し、施主からも喜ばれました。

吉田:営業・設計と現場の連携がとてもスムーズで、工事中も予算に見合うプランを迅速に提案できたことや、新日鉄グループで取り組んだことも、よかったと思いますね。計画当初から、県や市の信頼度も高かったですから。鋼構造技術に大きな強みを持つ当社ですが、お客様ニーズにキメ細かく応えるカスタマイズ力という点でも、豊富なノウハウを有しており、機能的で事業性の高い建物をご提供できると自負しています。九州支社へのお問い合わせも、お待ちしております!

案件概要

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【長崎 BizPORT(ビズポート)オフィスビル 新築工事】

所在地 :長崎市元船町9番18号

構造規模:鉄骨造 地上11階建 建物用途:店舗(1階)・事務所(2階~11階)・駐車場 建築面積:1356.72㎡

延床面積: 14422.95㎡(約 4,362.94 坪) 基準階面積: 1,003㎡(約 303 坪)

設計施工:新日鉄住金エンジニアリング(株)

工期  :2017年7月1日〜2019年1月31日

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