「鋼×想=力」特集
大型物流施設での導入例が増加!
支承機能と減衰機能を併せ持つ鉄の免震装置「NS-SSB」

2021年3月3日

ご安全に!

近年、物流施設建築で急速に普及している免震装置、球面すべり支承「NS-SSB®」(※1)。鉄という素材を熟知する当社だからこそ実現できた〝鉄の免震装置〝であり、高度な免震性能が要求される建物において威力を発揮します。2014年の販売開始以来、大型物流施設・共同住宅・病院・庁舎・事務所ビル・データセンター・工場など、累計約4,000台の実績を重ねています。

NS-SSB®は、従来の免震装置と比較してどのような特徴があるのか。導入メリットや導入事例について、免制震デバイスを熟知する構造設計出身の営業担当者が熱く語ります!

※1SSB:Spherical Sliding Bearing の略 NS-SSB®:日鉄エンジニアリング(株)の登録商標です。

introduction

建物の地震対策として、耐震・制振・免震という形式があります。このうち免震は、地盤と建物の間に免震装置を設置し、地震の揺れを建物に最も伝えにくくする技術のことです。建物内での荷物の転倒などにつながりにくいうえ、地震後の建物機能維持、事業継続といった面でもメリットがある構造として注目されています。

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[語り手] 免制震デバイス営業室/山口路夫シニアマネジャー。元々は構造設計出身で、物流施設の設計に豊富な知識と経験を持つ。設計を熟知し、お客様の悩みどころが分かる営業マンとしてNS-SSB®の普及に力を注いでいる。 ※以下、敬称略とさせていただきます

従来の免震システムにはない性能とコストバランスが強み

編集部:「NS-SSB®」は、地震への備えやBCP(事業継続計画)強化といった建物の「免震ニーズ」の高まりもあり、販売開始以来、累積約4,000台の実績を重ねています。販売好調の要因としてどのような理由が考えられますか?

山口:NS-SSB®は2014年に販売を開始しましたが、販売台数が2019年に前年比2倍、2020年には、さらに2倍と急速に普及しています。この装置は、従来の免震と比べて、性能とコストのバランスが非常によいことが特徴です。実績を積むにつれ、設計事務所・建設会社様からの評価が着実に高まっていったこと、そして市場認知度を確実に上げてきたことが、販売好調の要因だと考えています。最近では、建設需要が堅調な物流施設への採用が増えていますね。

編集部:NS-SSB®と従来の免震との一番の違いは、どのような点になるでしょうか?

山口:日本では、免震構造の始まりがゴム系支承であったという歴史的背景から、「ゴム系支承」を中心に、用途に応じて平面滑り支承やダンパーを併用する免震システムが長い間免震システムの主流となってきました。しかし、このシステムですと、免震層の配線・配管が複雑になり、設計難易度が高くや設計にも時間がかかるという難点がありました。

対してNS-SSB®は、振り子の原理と鉄の技術を活かした免震装置であり、建物重量や内部の積載物の重量が変化しても、免震性能に影響を与えないことが最大の特長です。本装置だけで免震装置として必要な機能(※2)を全て備えているため、別置のダンパーを必要としません。つまり、免震部材が一種類で済むので、設計が簡単で免震層もスッキリと仕上がります。非常にコンパクトで薄い装置になりますので、土壌掘削コストが軽減できるという点も大きなメリットになります。

※2 免震装置として必要な機能:支承(建物を支える)、絶縁(建物と地面を切り離す)、減衰(揺れ幅を少なくする)、復元(元に戻す)

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NS-SSB®:厚鋼板を球面加工した上部・下部コンケイブプレートにステンレス製のすべり板を一体化。その間に配置したすべり材を貼付けたスライダーが振り子のように移動することで、地震エネルギーを吸収しながら建物を元の位置に戻します。

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NS-SSBの配置だけで、免震化が可能!設計も簡単で、免震層もスッキリ!

倉庫の積載量や重量バランスを問わず性能を発揮

編集部:なるほど、そうしますと結果として工期も短縮できますね。では、物流施設にNS-SSB®を採用するメリットというと、どのような点になるでしょうか?

山口:まず一番に荷物量が不確定な物流施設でも、免震性能を安定して発揮できるという点が挙げられると思います。

一般に、地震の際の建物の揺れの周期は、建物の高さや重さによって変わってきます。軽い建物や3階建くらいの低層建物は、周期が0.5秒程度で揺れが起こるためにガタガタと揺れやすい。

一方、地震動は0.5~1.5秒程度の周期で建物を一瞬にして壊してしまうパワーを持っていることが多く、この周期帯を避けて超高層ビルと同等の4~6秒でゆっくりとれるようにするのが免震です。

振り子免震は、大人が乗っても子供が乗っても揺れる周期が変わらないブランコに例えることができます。ブランコのようにヒモの長さ(曲率半径)で周期が決定し、建物重量に関わらず地震の揺れを吸収できるという特長があります。そのため、低層・軽い建物でも容易に高層ビルと同等の4〜6秒の免震性能を発揮できるようになったのです。

物流施設というのは、様々な重さの荷物が運び込まれます。衣料品はとても軽いですが、飲料などは重くなりますよね。テナント企業にエリア貸しをしている物流施設で、例えば建物の右側の荷物が軽い、左側が重いとなるとねじれが生じやすくなります。形状や用途等で建物内の重量バランスに偏りがある場合、通常はねじれ変形 (回転変形)を考慮した設計を行いますが、NS-SSB®はねじれ変形が生じにくく、建物外周部のクリアランスを小さく納められます。また将来、増改築や建物 内のレイアウト変更で重置バランスが変化しても免震性能は変わりません

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編集部:建物内部の積載物の重量が変化しても、免震性能に影響を与えないという点は、物流施設建設において非常に重要なポイントですね。

山口:そうなんです。NS-SSB®を導入していただくと、将来、増改築や建物内のレイアウト変更で重置バランスが変化しても免震性能は変わりませんので、お客様の大切な荷物を守ることができることに加え、設計が非常に容易なのです。

地震後も機能を維持! 病院やデータセンターにも採用

編集部:物流施設以外で、NS-SSB®を特にお勧めしたい建物というと、どのようなものになりますか?

山口:高度な免震性能が要求される建物全般にお勧めできます。例えば庁舎などの公共施設や病院、福祉施設など、災害時に機能不全に陥っては困る建物や、災害地の復旧拠点になるような建物に適していると思います。

データセンターへの導入もお勧めです。サーバー設備等の増設可能性がある場合にも、免震性能を維持できますし、地震の際に重要なデータを守り地震後も稼働できる状態を維持できるというメリットがあります。

震度6弱の大阪北部地震でも建物被害なし

編集部:実際にNS-SSB®の免震技術が役に立った事例というと、どのようなものがありますか?

山口:大阪北部地震の事例があります。大阪府北部は、新名神高速道路の開通で物流面の利便性がよいことから、大型物流施設が集中するエリアですが、2018年に大阪府北部地震に見舞われました(最大震度6弱を記録)。このとき、NS-SSB®を採用した「三井不動産ロジスティクスパーク茨木(MFLP 茨木)」 は、震源に近かったにも関わらず建物そのものに被害はありませんでした

この事例は、当時、新聞等で「免震物流倉庫大規模災害では防災拠点としての活用も期待される」と報道され、免震物流施設に一気に注目が集まりました。

https://mainichi.jp/articles/20180623/ddn/008/040/008000c

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MFLP 茨木 NS-SSB®を409台採用

編集部:最近の例では、大日本印刷株式会社「市谷の杜 本と活字館」(東京都新宿区)に26台が採用されました。

山口:本施設は、市谷地区の再開発プロジェクトの一環で、1926(大正15)年の竣工以来「時計台」の愛称で親しまれてきた「旧営業所」を修復・補強し、内外装を竣工時の様相に復元したうえで活版印刷の技術とその魅力を伝える文化施設として建て替えるというものです。耐震性能向上のため、免震構造による改修が行われています。歴史的建造物を保存するために、免震技術が使われるということは、我々にとっても非常に価値のあることで、今後こうした事例が増えていくといいですね。

編集部:技術面では、「3時間耐火認定」を取得しましたが、これについて詳しく教えていただけますか?

山口:近年、建物の中間層に免震装置を配置する"中間層免震"や、1 階に駐車場やエントランスなどを設ける場合に、1 階柱の上部に免震装置を配置する"柱頭免震"のニーズが高まっており、それらの免震装置には 耐火性能が要求されます。 今回、「NS-SSB®」の外周部に耐火被覆材を配置し「3時間耐火認定」を取得することにより、"中間層免震"、"柱頭免震"への対応が可能となりました。従来よりも適用範囲が広がったということですね。

編集部:最後に、営業担当としての意気込みを聞かせてください。今後の展望としては、どのように考えていますか?

山口:NS-SSB®の優位性がもっと広く知られるように、PRを強化していきたいですね。特に「小さい規模の案件(小規模軽量建物)建物で、免震しやすくなっている」ことを多くの方に知っていただいて、免震市場を拡大していきたいと思っています。

具体的には、地方の優良企業のオーナー企業様の建物にぜひご採用いただけたらと考えています。これまでは、技術力の高い設計事務所でないと免震を扱えないというイメージがあったかと思うのですが、NS-SSB®は設計が容易で、装置もコンパクトですから非常に導入しやすい製品です。地震が多いこの国で、地震に対するリスクを大幅に低減できるという点では、NS-SSB®の普及は社会貢献にもつながると感じています。さらなる普及拡大を図っていきたいですね。

編集部:構造設計を経て、現在は技術営業。免震装置の使い方や特長を熟知している山口さんのような営業マンがいることが、当社の強みです。お客様の悩みどころや与条件に合ったご提案が可能ですので、是非お問い合わせをいただければと思います。

news

2021/3/9〜12 第14回 国際物流総合展2021に「NS-SSB®」を出展いたします。

https://www.logis-tech-tokyo.gr.jp/ltt2021/index.html

NS-SSB®(球面式すべり支承)WEBページ

https://www.eng.nipponsteel.com/steelstructures/product/base_isolation/nsssb/

免制震デバイス製品カタログ

https://www.eng.nipponsteel.com/steelstructures/download/

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