「鋼×想=力」特集
短工期、コロナ禍、厳しい条件下で完遂させた
『NSスタンロジ』プロジェクト

2021年5月31日

ご安全に!

今回は、日本通運株式会社様より受注した「刈谷北物流センター(愛知県刈谷市)」の事例を紹介します。本施設は、中規模物流施設向けシステム建築商品『NSスタンロジ®』をご採用いただいた案件です。耐震部材『アンボンドブレース®』を適用し、優れた耐震性能を有する物流施設を実現しています。

施工においては、お客様が営業を継続する中、既設建屋の解体・土地造成(開発工事)・本体新設が重複する工事となりました。さらに、コロナ禍での短工期施工が求められた難工事でもありました。厳しい条件を克服してプロジェクトを完遂させた背景にはどのような取り組みや工夫があったのか。プロジェクトメンバーと共に、振り返りました。

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左から、都市インフラセクター 建築本部 プロジェクト部 建築工事室 マネジャー 髙田浩司(現場所長)、同 プロジェクト室 シニアマネジャー 池田達也(プロジェクトマネジャー)

営業車両が出入りする中での工事がスタート

編集部:今回、池田さんはプロジェクトマネジャーとして本案件に関わられました。はじめに、「プロジェクトマネジャー(略:プロマネ)」の役割を教えてください。

池田達也:現在、当社では一定規模以上のプロジェクトにプロマネを配置しています。役割を端的に言いますと、プロジェク全体の旗振り役、社内各部門やお客様・関係者等との調整役ということになります。営業・設計・工事の各部門が持てる能力を存分に発揮し、プロジェクトが円滑に遂行されるように力を尽くす、プロデューサーのような立場になるでしょうか。品質、コスト、工程について責任を負う立場になりますね。

当社では通常、設計・施工を一括して受注することが多いのですが、本案件は、設計が日通不動産様、そこに当社の設計チームが参加するというチーム編成でした。すでに工期(竣工日)が決定していましたので、まず最初に、いかに期日までに設計をまとめて頂くかという働きかけが、非常に重要でしたね。

髙田浩司(現場所長):私は、入社以来ずっと全国の現場を渡り歩き、施工管理を行ってきました。住宅、倉庫、専門学校、工場、事務所と、様々な現場を担当してきており、所長としての案件は今回が3件目です。

池田さんと組むのは、今回が初めてでしたね。現場を取り仕切るのは私ですが、工事にはお施主様はじめ、様々な人が関わりますので、会社として調整が必要な事項は、プロマネの池田さんに対応してもらった方がスムーズなことが多々あります。特に今回のような難しい条件が重なるプロジェクトでは、経験豊富な池田さんの存在は大変大きかったと思います。

編集部:本案件では、工程調整・管理が非常に厳しかったそうですね。まずは建物の概要や現場の状況を教えていただけますか?

池田:本工事は、当社の「NSスタンロジ」を用いた、2階建の全館空調設備を完備した高機能の物流施設になります。NSスタンロジの特長である、高品質(非常に堅牢)と経済性を両立させた建物です。

また、中部地区で2件目となるNSスタンロジ案件であり、かつ物流トップ企業からご下命頂いたということで、非常に重要な案件でした。日本通運様のご発注条件として、既に入居テナント様が決定しており、2020年12月までの竣工厳守ということでしたが、短工期・高品質・低コストを特長とする「NSスタンロジ」は、まさにその条件にぴったりでした。

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髙田:条件が厳しかった大きな要因としては、営業中の施主構内で既設解体、開発(土地造成)、本体新設工事という3つの工事を、短工期で進めなければならなかったことがあります。
現場は川に隣接している土地で、国道1号線よりも地盤が低く、過去には雨で水浸しになることもあったようです。このため、地盤を嵩上げする開発工事が必要でした。

解体工事においては、既存の倉庫が7棟あり舗装や杭が残っていました。結果的に残せるところは残しての設計ができましたので、早期に設計検討ができたことが、良かった点ですね。

一方で、同一敷地内に営業中の事務所と従業員の方々の駐車場(乗用車40~50台分)のほか、約30台の配送用大型トラック・トレーラーが毎日出入りする環境でした。昼間は営業に出ているトラックが、夜になると全部戻ってくるわけですね。土曜日は定休日となるため、全駐車スペースがトラックで埋まってしまいます。このため、本来は工事用ゲートが2つあるのに1つは全く使えなくなってしまうなど、施工上の様々な制約がありました。お客様が営業継続している傍で、安全対策に十二分に配慮しながら工事を進める必要があり、その点が非常に悩ましかったですね。

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編集部:営業中の車両出入りが頻繁で、工事に必要なスペースの確保が難しい現場だったのですね。

髙田:そうですね。まず解決すべき問題は、車両を置く場所をどうやって確保するかということでした。お客様との綿密な調整が必須でした。

お客様目線で知恵を出し合うことで生まれる信頼

編集部:調整はスムーズにいったのですか?

髙田:全工期において調整の毎日でした。日本通運様のご担当者を始め、日通不動産様の方々も非常に協力的に対応頂き大変助かりました。早くにお客様と良好な関係を構築できたことで、現場サイドからの提案・意見にも耳を傾けて頂けましたし、皆で知恵を出して課題に対処できたことが、工事を順調に運べた大きな要因だと思います。

編集部:お客様との関係づくりという点では、どのようなことを心がけたのですか?

髙田:やはり信頼関係の構築が何よりも大切ですね。幸い、お客様の事務所が敷地内にありましたので、毎日関係者同士で顔を合わせられる環境でした。その中で、心を開いて言葉を通わせて、誠実に対応するよう努めました。工期が12ケ月しかない中で、最初の1~2ヵ月で率直に意見を出し合って「ここは頼むね」と言い合える関係になれたことは大きかったですね。社内的にも池田プロマネをはじめ、設計・調達・安全・工事・営業担当者が一丸となって各々の持ち場でベストを尽くした結果が、所定工期を短縮しての完工に繋がったと思います。

池田:例えば駐車場の問題にしても、お客様は困っていて、当社に助け舟を求めてくださっている訳です。それに対して、頭ごなしに「出来ません」と淡々と返すのではなく、先ずはご要望に耳を傾けて、その上で「この部分は難しいですが、この方法なら出来そうです」といった代案を出すことが重要なのです。お客様も「それならやってみようか、こちらもこの部分は我慢しようか」と真摯に受け止めてくださいます。こうしたお客様目線での丁寧な対応は、先輩方に代々、教えられてきたことでもありますね。

ただ今回は、駐車場の問題だけでなく、追加・変更工事のご要望もあり、調整が難航しました。具体的には、着工後、メイン建物の横に給油所を設置されたいという御相談があったのですが、現場と協議を重ねて解決策を導き出しました。

髙田:給油所については、同じ工期内で対応するのは正直難しいと思いました。しかし、本体工事の完了後に施工して、開業タイミングに間に合わなかった場合はお客様に迷惑がかかってしまいます。関係者で検討した結果、この追加工事も一緒にやろうという結論に至りました。

編集部:具体的にどの様な方法で対応したのですか。

髙田:新規の給油所が施主駐車場エリアの為、駐車できないトラックが出てしまうのですね。この停められなくなる7台分の善後策をどうするか等、お客様と一緒に検討を重ねました。駐車スペースの問題は本当に苦肉の策で、先に倉庫の一部のアスファルト舗装を先行施工し、夜に帰ってきたトラックの駐車場を確保しました。それには安全管理の施主とのルール決め・管理も重要でした。

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池田:定例会議では私から状況を説明して、関係各所にご理解・ご協力を求めました。12月の完工に間に合わせたい想いは全員共通ですから、柔軟に対応してくださいましたね。

髙田:私たちの仕事は、お客様のご要望を叶えることを前提としつつも、そのすべてに応えられない場合がどうしてもあります。ですから「出来ること、出来ないこと」の明確な回答をタイムリーに提示することが重要です。最初の回答が曖昧だと、それがどんどん膨らんで最終的に大きなトラブルに発展することもありますので。

我々一人ひとりが、建築の専門家、プロとして知恵を出し合えば、大概の問題はクリアできると私は考えています。皆が前向きに取り組むのか、ダメだと引いてしまうのかでは、結果が大きく異なります。工事に係るすべての人が、持っているスキルを最大限発揮できる雰囲気を作ることが私の役割だと思っています。本件では難題を一つひとつクリアしながら、最終的に給油所の設置工事も間に合いました。お客様には大変喜んでいただきました。

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コロナ禍での工事、管理の難しさを乗り越えた

編集部:昨年1年間は、新型コロナ対策も大変だったのではないでしょうか。

髙田:そうですね。例えば外構工事は、お客様の営業時間外に行う必要があり、敷地を南北半分に割って、一方をGW中の8日間に、他方をお盆休みの1週間として工期を割り振り、休みなしで集中的に行う計画でした。しかし、その時期がちょうど新型コロナの自粛期間などに重なってしまったんですね。それでも進めなければ工期に遅れてしまいますから、工程調整してやり切ったというところですね。

また、施主の指示もあり4月途中から8月のお盆過ぎまで、本社(東京)からの往来は一旦ストップ。ちょうど本体工事がスタートした矢先に、池田さんも設計担当者も現地入り出来なくなりました。定例会議はオンラインに変更です。こうした事態は初めてでした。

池田:3月に安全祈願祭を行った直後に、緊急事態宣言が出されましたからね。会議をオンラインに切り替えるにしても、最初のうちは慣れていないので苦労しました。いつ(緊急事態宣言が)明けるかも分からない状況で、現場に一度も行かないまま建物が出来上がってしまうのではと焦る気持ちでした。

髙田:ある時期には、お客様の営業活動の一部がコロナ影響で休止を余儀なくされ、日中からトラックが駐車場に止まったままという状況が続きました。日々状況が変わる中で、柔軟なやり繰りが求められましたね。

現場では、クラスターが起きてしまうと施主に多大なる迷惑が掛かります。毎朝検温し、休憩所にも除菌液を置いて、作業員始めスタッフには少しでも体調が悪かったら休むようにと伝え、とにかく万全な管理を徹底しました。

編集部:一人も感染者が出なかったということは、本当に全員のチームワークで乗り越えた感が大きいですね。

池田:そうですね。加えて、コロナ禍では調達面の問題もありました。ご承知の通り、建物を作るには色々な資機材を仕入れる訳ですが、モノが入ってこないと現場作業が止まってしまうので、私の役割として、各方面に小まめに納期確認しながら進める必要がありました。早目早目に動いたことで、モノが入ってこない事態や、職人さん集めの苦労は幸いありませんでした。現場に支障が無くて本当に良かったです。今回は現場所長にお任せした部分が多くなり、苦労をかけたなあと思います。

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髙田:忘れられない現場になりましたね。

床クラックがほぼなく仕上がりも好評価

編集部:お客様の評価はどうでしたか?

池田:関係者の努力もあり、最終的に工期を2週間ほど前倒しできました。今年の年明けすぐから操業出来るということで、お客様からは高い評価をいただきました。竣工式の際には感謝状を頂戴し、お客様から「ありがとう」と労いの言葉をかけてもらいました。

髙田:建物の品質面では、竣工検査もスムーズに通りました。無災害でコロナ感染者も熱中症も出なかった。厳しい条件下で問題なく遂行できたことに満足しています。名古屋の夏は本当に暑くて、マスクをしながらの作業となり、作業員も大変だったと思います。

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池田:今回は敷地の問題等から、臨機応変な諸対応を余儀なくされましたが、新たな挑戦が奏功して確かな実績に繋げることが出来て、日通不動産様からも高い評価を得ました。

仕上がりとしては、床のコンクリートが非常にきれいで、入り口や高さの表示サインも非常に良いとの高評価を得ました。アンボンドブレースは、日本通運様のコーポレートカラーのオレンジ色とし、内装も良い仕上がりでした。当社側から提案したものが評価されたことは非常にうれしいですね。次の案件のご相談もいただいているようで、大変有難く思います。

髙田:物流施設は、床仕上げが大変重要で、お客様は、建物構造上で問題がなくても、床クラック(コンクリートのひび割れ)を意匠的にも非常に気にされます。
本案件の床コンクリートについては、構造設計担当者とも協議して、配合の検討を重ねました。その結果、現時点でもクラックがほぼ無いというのは、非常に上手く施工できた証と言えます。外構との取り合いや納まりも良かったですし、今後の他工事にも展開できる好事例になりました。この成果を次の現場に活かしていきたいですね。

池田:日本通運様というグローバル企業からご評価いただけたことは、非常にうれしく誇らしいことです。ぜひ今後の案件でも、当社にお任せいただけるよう努力していきたいと考えています。

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【NSスタンロジ®】特設WEBサイト

https://www.eng.nipponsteel.com/sp/slg/

NSスタンロジはシステム建築の強みである、高品質・短工期・納得価格を実現しながら、お客様の荷物を守り、より高い安全性と使い勝手のいい空間をご提供します。

案件概要【日本通運株式会社 刈谷北物流センター】 

所在地   :愛知県刈谷市下流1-1
階数・構造 :鉄骨造地上2階建て・耐震構造
延床面積  :7,974㎡
敷地面積  :11,288㎡
鉄骨重量  :約600t
受注範囲  :建築・電気・給排水・空調、既存解体・開発工事・外構工事
工 期   :2020年01月06日~2020年03月20日(解体工事)
       2020年03月06日~2020年12月31日(開発工事)
       2020年04月01日~2020年12月31日(本体工事)
発注者   :日本通運株式会社
設計・監理 :日通不動産株式会社

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