Career path
Project
震災からの復興に貢献
福島県の除染廃棄物などの仮設減容化施設の運営プロジェクトに、吉元がアサインされたのは、入社3年目後半のこと。当時、香川県のごみ処理施設で「低炭素型シャフト炉」の実機試験に携わっていた吉元は驚いた。
「東日本大震災から5年経っていましたが、震災廃棄物の問題は解決されていないのは知っていました。とはいえ、自分が復興に関われるとは思っていなかったのです」
シャフト炉式ガス化溶融炉でセシウムが含まれる廃棄物を本格的に処理した例はない。しかし、国としては、大量の震災廃棄物を速やかに減少させる必要性に迫られていた。そんな中、シャフト炉式ガス化溶融炉が着目され、日鉄エンジニアリングがプロジェクトを受注したのだった。
吉元は福島の現場に入り、人々の住宅の側の仮置場に積み上げられた震災廃棄物を目の当たりにした時心から思った。「復興のために貢献したい」と。
吉元のミッションは、安全管理のもと、施設の運営業務を行うとともに、放射性セシウムの挙動について最終処分に向けた構想の礎となる知見を整理することだ。「難しいのは、1日80トンもの廃棄物があり、その中身も一定ではないこと。そのためセシウムの挙動がどの因子の影響を受けているのか完全に把握することは困難です。しかし、そんな中でも運転プロセスとセシウムの挙動の相関を見て原因を追求していくのは、技術者としてやりがいのある仕事でもありました」
その後、施設は無災害で処理を完遂。また、当社のシャフト炉式ガス化溶融炉が放射性セシウムを含む廃棄物の極小化に有利であることも証明できた。そしてその実績が評価され、次の減容化施設プロジェクトを受注。現在は新たな減容化施設の運転を開始し、引き続き東日本大震災からの復興に貢献している。「社会が復興に向けて大きな課題に立ち向かっていく中で、事業者としての役割を地道な努力により果たすことができました」
吉元はそのプロジェクトの一員になれたことに誇りを感じている。
Lesson
多くの人と協力することで
得られる大きな成果
当プロジェクトにアサインされた当初、吉元はある壁に突き当たっていた。
「施設には、当社の運営メンバー以外に、運転に携わる方、測定・分析業務を行う方など多くの関係者がいて、全員の協力で安全な運転が成り立っています。その中で自分が計画した放射性セシウムに関するデータ収集試験を行うためには、いつもと違う条件においても確実に安定運転を行うために関係者全員の協力が必須です。しかし最初は『手順を変えることはできない』『聞いていたことと違う』などと少なからず抵抗感を示される場面がありました」
このままでは将来の可能性につながる知見を得ることができない。吉元はどうしたら気持ちよく協力してもらえるか懸命に考えた。そこで出した答えは、試験の目的について共通認識を持ってもらうことだった。その後、吉元は「何のための試験なのか」を関係者それぞれに技術的な内容をわかりやすく伝え、納得してもらえる説明を行うことを心がけた。やがてその地道な取り組みが、関係者たちの心を動かした。
「気がつくと、皆のモチベーションが上がって、やってやろうという雰囲気が生まれていました」
吉元はいかに困難な状況においても、可能なやり方を皆で考え同じ方向を向いて取り組むことで、素晴らしい成果を得ることができることを知った。それは今、吉元のエンジニアとしての志を遂げる原動力となっている。
「私が成し遂げたいのは、より効率的なごみ処理施設のシステムを開発して、人々が暮らしやすい社会をつくっていくこと。そのためにこれからも経験を積んで知識を磨いていきたいと思っています」
ごみ処理施設の技術は刻々と進化し、高効率発電や自動化、AIなど技術トレンドも変化を遂げている。吉元はそうした中、プラントエンジニアリング会社のエンジニアとして多くの人たちと協働し、新しいトレンドをリードしていく存在になりたいと考えている。
Profile
環境技術部 技術・開発室
2013年入社
工学研究科都市環境工学専攻修了