「鋼×想=力」特集
3000㎡超の大型倉庫を5ヵ月で
岡部(株)新倉庫棟増築プロジェクト 担当者様にインタビュー

2021年12月13日

ご安全に!

今回は、2021年10月31日に竣工した「岡部(株)茨城工場新倉庫増築計画」の事例をご紹介します。

様々な建設資機材を製造・販売する岡部株式会社様と当社のお取引は、新日鉄時代から続いており、1993年の構造実験センターから、京都工場、本社ビル(東京都)、茨城工場、総合実験センター、久喜工場(埼玉県)、千葉工場など多くの仕事をご発注いただいています。

当プロジェクトメンバーの皆様に、ご発注の経緯や完成建物についての評価、そして今後、当セクターに望むことなどを伺いました。茨城工場で行なった座談会の模様をお送りします。

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[出席者] 

岡部株式会社様(右3名):左から、後藤新一様(生産部部長代理)安野祐二様(総務人事G総務T部長)、平島直樹様(茨城工場工場長)

日鉄エンジニアリング株式会社都市インフラセクター(左3名):左から、神田美香(営業担当/営業本部建築営業部建築営業室)、高田浩司(現場所長/建築本部プロジェクト部建築工事室マネジャー)、堀尾吉持(PM/建築本部プロジェクト部プロジェクト室シニアマネジャー)

以下、敬称略とさせていただきます

長年培ってきた実績と信頼、製品の共同開発も

編集部:岡部様と当社の取引は20年以上になり、これまでに工場や研究所の新設、改修工事など18件をご発注いただきました。まずはこれまでのお取引の背景について、お聞かせください。

堀尾(日鉄エンジ):プロジェクトマネージャーの堀尾です。私自身の岡部様との付き合いは10年ほどになりますが、岡部様と当事業部の関係はもっと以前からありました。1993年に完成した構造実験センター(千葉工場)の設計施工が第1号案件です。また、製造業という同じ立ち位置で、制震デバイスなどの部材を岡部様から購入し建設工事に使用したり、実験センターでは製品を共同開発したりと、もともと良好な関係がベースにありました。

その後、京都工場、本社ビル、茨城工場の工場棟の建設では、設計は別会社、当社が施工を担当、既存建物の耐震補強案件などもご発注いただきました。続いて、2017年に完成した総合実験センター、久喜工場、千葉工場、今回の茨城倉庫棟は、設計施工を担当させていただいております。余談ですが、幹部同士のコミュニケーションも良好ということでうれしく思います。

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安野(岡部様):弊社は、建材メーカーで、大正時代にネジ工場としてスタートし、八幡製鉄所(現・日本製鉄)から鉄の棒材を仕入れていました。そうした背景もあり、グループを含めて長いおつきあいになります。

堀尾さんがおっしゃるように、建築物だけでなく製品の共同開発も含めて、ともに歩んできて今日があるという感じです。本社ビル建設の時の社名は「新日鉄エンジニアリング」さん、でしたね。契約したときと竣工の際に、御社の社名が変わるという瞬間が三度あり、私個人としては、歴史的瞬間に立ち会えて思い出深いです。

後藤(岡部様):私は、これまで4つの建築プロジェクトに関わってきました。今回の倉庫棟新築では、事務局兼、付属工事の取りまとめとして参加しています。一担当者としては、プロマネの堀尾さん、設計の砂川さんというベテラン勢が長年当社を担当してくださっていることが、非常に頼もしいです。当社の企業理念は「安全・安心の提供を通じて、社会に貢献する」ですが、お二人は、私たち以上に安心、安全について様々なアイデアを提案し、的確なアドバイスをしてくださるという印象があります。

安野(岡部様):当社の様々な事情はもちろんのこと、企業としての姿勢や想いをわかってくださる方と仕事ができるので、安心感がありますよね。私は本社の総務で書類関係を担当していますが、今回も順調に進めることができて助かりました。

スピード感ある決断で、材料費高騰の波を避けられた

編集部:今回の倉庫棟増設工事は、どのようなプロジェクトでしたか。

平島(岡部様):現場責任者の平島です。茨城工場ができて丸6年になりますが、2021年11月に「セレクトベース」「SPフィットブレース」という新製品を発売することになり、保管場所が手狭になってきたことから、当プロジェクトが立ち上がりました。ただ、将来的には、生産場所としても活用できる施設にしたいという当社の意向があり、将来性と拡張性を備えた倉庫ということで、お願いしました。

後藤(岡部様):最終的には、約3400㎡とかなり大きな倉庫になりました。茨城工場の将来を見据え「拡張性を考慮すれば間仕切り壁をなくすことも可能じゃないか」とご提案いただき、非常に使い勝手がよくなったと感じています。

神田(日鉄エンジ):営業担当の神田です。昨年11月にご相談いただいた時点では1500㎡規模でした。その後、大きく建てた方がコスト的にもメリットが出るということで、複数案をご提案し、12月には3400㎡案で決定。1月末には内示書をいただくという、非常にスピード感のあるご決断をしていただきました。私自身は初めて参画する岡部様案件でしたが、過去の経緯や現場を知る先輩方がいたおかげで、スピード感を持って取り組むというところに注力できたプロジェクトでした。

後藤(岡部様):振り返ると、見積もりから契約後、現場工事まで、これまでにないペースでよく間に合わせていただいたなと感謝しております。着工から引き渡しまで、5ヵ月間しかありませんでしたから。

倉庫完成を急いだ背景にはもう一つ、材料高騰の噂があり、早く仕様を決める必要があったからです。おかげさまで、材料費高騰の影響を受けずに本件を進めることができました。あと2ヵ月ずれていたら、相当な費用負担になっていたと思います。

現場については、高田所長が常に工期短縮を目指し各種調整を先行して進めてくださったので、安心してお任せできました。逆に余裕ができて、こちらの別途工事等の手配が間に合わずお待たせしてしまったくらいです。コロナ禍と夏の暑さの中で、契約通りに進めていくのは本当に大変だったと思います。

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柔軟さで乗り越えた猛暑とコロナ禍

編集部:ご採用いただいた、「スタンパッケージ」は、短工期、低コストのシステム建築商品です。また、当社の現場所長の高田さんは、2013年の本社ビル建築の時に建築主任として携わり、岡部様の案件では本件が2案件目。当プロジェクトをどう進行していったのか、高田所長からお話いただけますか。

高田(日鉄エンジ):6月1日着工、10月31日引き渡し予定でしたが、検査期間も考慮して完成目標は9月中、実質工期は4ヵ月間でした。平屋とはいえ3000㎡はかなり大きな倉庫になりますし、真夏の真っただ中に屋外での工事を実施するので、厳しいかなと思いつつも進めてきました。また、新型コロナの第5波がやってきていたところで、茨城県内でも感染者が増加している状況でした。常に緊張感のある現場だったことは確かです。結果的には、コロナ感染者も熱中症も一人も出さずに完工を向かえホッとしています。

編集部:ギリギリの工期の中で、工夫した点というとどのようなところですか。

高田(日鉄エンジ):隣接する岡部様の実験センターで採用いただいた「パネルU」という製品を本工事でも使わせていただいたり、本来なら建物の工事が終わった後に行う外構工事を先に着手したりと、計画を柔軟に、そして臨機応変に効率よく進めることを心がけました。

人材確保という面では、ワークライフバランスの課題がありました。工事は天候など色々な要因で遅れることがあります。しかし、だからといって、際限なく人を配置するわけにはいきません。社の規定に沿って、従業員の休みをきちんと確保しながら進めるのは大変でしたね。

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後藤(岡部様):改めて4ヵ月という短さに驚きます。もう二度とできないような気がするくらい、すごいことを達成してくださったと思いますね。

編集部:全体を通して、岡部様は当社のパフォーマンスをどのように評価されていますか。

後藤(岡部様):全工程において、やりとりが非常にスムーズでした。先ほども述べましたが、我々が大事にしている企業理念や、求めているものをすでに共有していただいている点が大きいと思います。細かい説明なしで、お任せできるという点ですね。

具体的には、デザイン面では、2015年の茨城工場第1期工事あたりからコーポレートイメージが踏襲されてきています。建物の強度に関しては、岡部が耐震製品を売っていることから通常よりもしっかりしたものを作っていただく必要があります。また、当社のチェックが非常に厳しいことなども堀尾さんはよくご存知で、きちんと準備してくださった。最終段階で、細かい補修がしてあることは、現場を見ていればわかります。いつも通りやってくださっているなという、安心感がありました。

日鉄エンジさんにお任せしておけば、品質面は大丈夫。我々は、そこにどれだけ岡部の要望を入れていただくかというところだけ注力すればいい。そうした面は非常にありがたく、今後とも期待してしまうところですね。

堀尾(日鉄エンジ):ありがとうございます。後藤さんがおっしゃるように互いの共通認識があるからこそ、営業段階から具体的なご提案ができ、設計、施工までの全工程を通常の2/3ぐらいまで短縮できているんじゃないかと思いますね。

実用性にも配慮したものづくり、総合力を評価

編集部:完成建物のご評価はいかがでしょうか。

後藤(岡部様):倉庫というシンプルな建物ということもあったと思いますが、順調すぎるくらい完璧な仕上がりでした。当社製品は重量のあるものが多く、床にクラックが入りやすいんですが、もし何かあっても日鉄エンジさんはアフターケアも万全ですので、安心できますね。

これまでのお付き合いから、日鉄エンジさんの作る建物は、使う人の実用性を重視してくれる点も気に入っています。企業イメージとして見た目がかっこいいことも大事なんですが、実際使うのは従業員です。収納や空調などが快適でないと非常にストレスが大きいので、現場の意見も聞いてほしいなと思うんです。以前担当した久喜工場(埼玉県)の新設の際にも、空調のバランスや厨房など、1つ1つ要望を聞いて対応していただいたことを思い出します。

品質もスピードも、結局は「総合力」だと思っています。互いの価値観やプロセスなど全てが結果に現れるのだと思います。結果的に、良いものを短期間で作れたことや、完成後に修正依頼がほとんどないということは、総合力が非常に高いという証ではないかなと思いますね。私たちの見えていないところで、たくさんご苦労されていると推測します。

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編集部:ありがとうございます。高田所長、現場で苦労した点というとどのようなところでしょうか。

高田(日鉄エンジ):操業中の工事でしたので、操業の迷惑にならないように、協力会社にも配慮してもらう必要がありました。例えば、外構工事の際は、従業員の皆様が普段使われている駐車スペースの調整が必要になります。その点は、岡部様にも早めにご相談し、従業員の方の車を移動していただくなどで対応していただきました。おかげさまで、安全を確保しながら品質も確保するという良好な現場運営につながりました。

また今回は、岡部様の「ベースパック」という商品を使っていますが、敷地内の工場から直送していただくという、非常に珍しい方法で材料を調達しました。「ベースパック」の施工状況を従業員さんに見ていただくという、現場見学会も実施しました。さらに、敷地内の総合実験センターの技術開発部の試験として、型枠締付け金具の強度実測なども行っていただきましたね。

平島(岡部):延べ日数にして10日ほど見学会を実施し、施工のポイントとなるところで、従業員が見学させていただきました。自分たちの作った製品が、どのように建築に使われているのかを知る機会、見る機会はほとんどありませんから、非常に貴重な体験になったと思います。こちらの無理なお願いを聞いてくださり、本当に感謝しています。

高田(日鉄エンジ):天候面では3回も台風に見舞われました。鉄骨の立柱式に台風が直撃して1日延期になり、コンクリート工事の際や外構舗装の際にも台風がらみの雨で延長したり。天候に左右されながらも、なんとか対応できたことも想い出深いですね。

SDGs、海洋事業でも引き続き協力関係を

編集部:最後に岡部様から当社への要望も含めて、今後の展望についてお聞かせください。

安野(岡部様):私どもの案件では、これまで操業中の建て直しが非常に多く、動線なども苦労されたと思います。

例えば、旧耐震の建物で、働いている従業員がいながら、補強を行わなければいけない工事や、女性社員への配慮がされていない建物を今のニーズに変えてもらうといった工事ですね。そのような場合、従業員に一時的に場所を移動してもらうなど、様々な制約が発生し我慢を強いることがどうしても出てきてしまいます。互いに信頼関係がないと、亀裂が入ったり、トラブルが発生したりという懸念も出てきます。

しかし、日鉄エンジさんの施工案件では、従業員からクレームが出ません。プロジェクトマネージャーである堀尾さんの人望なのかなと思いますね。堀尾さんに任せておけば、解決してくれるという安心感があります。これからもよろしくお願いいたします。

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堀尾(日鉄エンジ):準備をしっかりしておいても、工事中にご迷惑をおかけする可能性はありますので、何か起きてしまったら「申し訳ございません」と真摯に対応することが大切ですね。特別なことはしていませんが、それに尽きると思います。

今後は、SDGsの観点から環境配慮というところまで工夫していけるといいですよね。新規案件がありましたら、互いの技術の融合をぜひ実現できたらと思います。

後藤(岡部様):そうですね。炭素排出量の少ない部材を使いたいという案は今回も出ていました。ただ、工期的に実現が難しかった。次は、太陽光の導入なども含めて、また一緒にトライしていきたいですね。日鉄エンジさんは、すでに再生エネルギー関係の事業を立ち上げておられます。当社も、脱炭素を実現するため何か新しい事業に挑戦できたらと考えています。

そのほか、海洋事業では、日鉄エンジさんは大規模沖合養殖システムを、当社は魚礁・藻礁・増殖礁の提案・販売などの事業がございます。この分野でも、一緒に仕事ができたら面白いのかなと。魚好きの私としては、魚場を豊かにする仕事も夢があり、トライしてみたいところです。

神田(日鉄エンジ):ぜひ、よろしくお願いします。

後藤(岡部様):過去には、法律面でトラブルのないようにサポートしていただていたことを思い出します。文化財が埋蔵されている可能性のある土地などに建物を建てる際には、ヒヤヒヤさせられます。過去には、エンジさんでなかったら難しかったかなという案件も、多々あったと思います。

また、御社は人材豊富で、ベテランの方々のサポートも非常に心強いです。久喜工場の新設の際にも、所長だった宮本さんが、何か課題があると必ず複数案を提示しながら「どうしましょうか」と相談をしてくださった。この解決方法しかないというのではなく、意見交換するプロセスを忘れないでいてくれます。だから、我々にもただ任せっきりだったわけでなく、「一緒に課題を解決し、ともに建物を作り上げた」という満足感や納得感があるんですね。こうしたプロセスを経てものづくりをすれば、間違いなくいいものができると確信しています。今後も、こうしたいい関係が続くことを望んでいます。

神田(日鉄エンジ)先輩方が築いてきたレガシーを受け継いで、我々若手も「お客様にとってベストは何か」を追求し、ご提供していけたらと願っております。チーム一丸となって取り組めたことは大きな経験になりました。コロナ禍で、直接の交流がなかなかできませんでしたが、また交流会なども実施していきたいと思います。ありがとうございました。

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【案件概要】
岡部株式会社 茨城工場新倉庫
所在地  茨城県下妻市半谷1100番地1
構造   S造 地上1階
延床面積 約3395.53m2
竣工時期 2021年10月
請負範囲 設計・施工一式

岡部株式会社様WEBサイト

https://www.okabe.co.jp

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