「つくる」で止めない。
「つなぐ」技術で、
次代の環境を動かす

天竜エコテラス

ただ、廃棄物を燃やすのではない。「溶かす」ことで、環境へ循環させる―― 日本有数の“ものづくりのまち”静岡県浜松市で2024年4月、廃棄物処理施設「天竜エコテラス」が稼働しはじめた。その心臓部に据えられているのが、日鉄エンジニアリングが手がけた「シャフト炉式ガス化溶融炉」だ。この炉では、約1,800度の高温で廃棄 物の可燃分だけでなく灰分まで溶かし、スラグを生成する。このスラグはコンクリート二次製品や アスファルト用骨材などの原料として 資源化されるため、他の廃棄物焼却処理 方式と比べ埋立処分量が大幅に削減される。
当プロジェクトの最大の特長は、日鉄エンジニアリング史上最高レベルの発電効率。排熱のエネルギーを活用した「発電システム」は廃棄物処理施設では一般的だが、「天竜エコテラス」では、24%以上という高効率を達成した。

T.I

プラント本部 整備部
整備計画技術室

設計統括補佐として社内の設計の取りまとめを担当。工事着工後は、現地にてプラント設計・建築工事との調整、プラント配管工事補助、試運転対応に携わる。

M.E

プラント本部 設計部
設備設計室 ボイラグループ

ボイラ設計担当として、発電プロセスに関わる設計業務を担当。試運転ではボイラ関係の機器調整等の主担当。


Project-Overview 前例をつくる。
技術を押し上げた、
高い目標設定

「天竜エコテラスのエネルギー回収型廃棄物処理施設の建設 は、構想段階から多くの困難が予期され、様々な試行錯誤を要するものでした。例えば、高温・高圧に耐えうる構造、タービンの抽気段数。」
そう語るのは、本プロジェクトで設計の取りまとめを担い、着工後はプラント設計 ・建築工事間の調整や試運転まで幅広く携わったT.Iだ。「廃棄物処理施設のボイラの出口蒸気温度 は400度程度が一般的ですが、天竜エコテラスでは発電効率を上げるため、450度という高い数値の実現を目指しました」と続ける。
さらに発電効率を上げるために、「天竜エコテラス」では、タービンから多段の低圧抽気蒸気を取り出し、プラント全体のエネルギー効率を向上させる「多段抽気タービン」 も採用した。抽気段数を多段化することで、24%以上という高効率の発電効率を実現している。この設計を担当したM.Eは、「時期によって持ち込まれる廃棄物は多岐に及び、処理する廃棄物によって蒸気の流量 も温度も変わってしまいます。処理する廃棄物の出現頻度を加味して、年間を通して高い発電量が出せるよう設計しました。試運転調整の難易度は抽気1段 の施設と比較すると格段に高い現場でした」と振り返る。
また、このプロジェクトにはさらなるミッションが課せられていた。これまで2Dで作成していたボイラの図面作成を、3D CADで作成するというものだ。これは、図面作成の効率化と同時に、技術のナレッジ化を目指したもの。技術を一現場だけのものとせず、他の現場へ展開させる新たな取り組みだ。

KeyPoint 点を線に。
試される
日鉄エンジニアリングの
「応用力」

「一口にボイラの温度を50度上げるといっても、開発の難易度は数字以上に高まります」T.Iは高温化の難しさをそう語る。
一般的に、ボイラの温度が高くなると、水管の腐食や劣化のリスクは高まる。さらに、今回の発熱資源は廃棄物。多くの不純物を含むため、通常の発電施設と比較しても腐食リスクはさらに跳ね上がる。ボイラの温度を50度上げつつ、実用的な設備を開発するためには、水管の腐食を抑制する技術、また腐食速度を正確に見積もる技術が必要だった。
これらの困難な条件をクリアした原動力には、日鉄エンジニアリングが誇る“横断力”があった。廃棄物処理場では類を見ない高温・高圧に耐えうる設計では、研究開発部門と連携し、材料の選定を進めた。「既に稼働している別の廃棄物処理場に水管を設置して素材の劣化具合を試験することも繰り返しました。配管の厚み から材質まで、当社の技術開発研究所とも協働して細部にわたる検証を行い仕様が決まりました」とT.Iは言う。
M.Eが担当した多段抽気タービンでも課題は生じた。これまでの制御システムとは異なる仕様が求められたのだ。理論だけではない、実地での検証が必要となった。「多段抽気を制御する新プログラムをどのように設計するか、実物を触りながら、他部門、社外のシステム会社も巻き込んで現場で複数の案を出し、トライ&エラーを何度も繰り返しました。」M.Eは粘り強く取り組んだ当時の事をそう語る。
一般的には設計と現地対応の試運転で担当を分ける事が多い中、 日鉄エンジニアリングでは、設計者が設計から試運転 まで、一貫してプロジェクトに関わる。「試運転では、想定外のトラブルが発生する事があります。トラブルの対応では苦慮することもありますが、一方で、設計時には気づかなかった新たな知見を得られる場面でもあります。次の現場で設計する際の糧になるんです。」と、試運転まで一貫して担当する体制が当社の技術力の源泉の一つだと、T.Iは話す。
かくして、日鉄エンジニアリング史上最高レベルの発電効率である溶融炉が完成した。

Breakthrough 部署の壁を越えた
技術の伝承が、
次の挑戦を変えていく

T.Iは「このプロジェクト成功の背景には、自社が培ったノウハウを共有する文化がありました」と振り返る。それぞれが高い技術力を持ち、その知見を持った専門家がすぐに駆けつけてくれる。知見が交差し、すり合わせを重ねることで「循環型社会の一端を担う高効率の廃棄物処理施設」は完成した。
このプロジェクトは社内の業務効率化にも影響を及ぼした。ボイラ設計における3D CAD利用だ。当時、3年目だったM.Eが担当した施策だが、従来の2D図面と比較して、確認作業には膨大な時間を要した。「トータルで費やした時間は通常の倍以上。それでも、他プロジェクトへの流用を見据えた組織全体の設計効率化という意味では プラスになる。そう考えて作業にあたりました」。社内の協力者であるボイラ設計の知見者から設計思想を伝授されながら3Dモデルの作成は日夜続いた。
天竜エコテラスのボイラはプラントで使用される機器の中でも特に部品数が多く、その数は数千点にのぼる。全ての構成部品を3Dモデル化したことで、他プロジェクトでも活かせるデータを蓄積する事ができた。かつモデル作成時に発生した様々なトラブルを作図チームと協議し、今後の作図ルールの策定にも繋がった。「膨大な数の構成部品を扱ったことで、配管やレイアウトのルール化まで繋げられたと感じています。今回の3D CADへのチャレンジは、当社のボイラ設計を前進させました。」 
天竜エコテラスで開発されたボイラの3D CADモデルは、  他のプロジェクトで改良が加えられ設計効率化のために現在も進化を続けている。 新たな知見を、また、他のプラントへ。「一気通貫」の日鉄エンジニアリングの軸は、アップデートを重ねながら、また次のプロジェクトへと受け継がれていくのだ。「今回のプロジェクトは、当社でも初となる挑戦を含んだ困難なプロジェクトでしたが、若手メンバーを中心に臨んだ、というのも特徴的だったと思います」と二人はプロジェクトを振り返る。若い社員の育成はもちろん、一つひとつのプロジェクトで生まれた知見・ノウハウの継承など、常に次世代へと繋ぐ視点を持ってプロジェクトが推進されるのも、日鉄エンジニアリングの強みだ。



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