営業・設計・工事 ワンチームで叶えた超高難度プロジェクト
―構造美の裏にある「一気通貫」の技術力-
麻布台ヒルズネットフレーム
未来形の自由曲線を叶える技術力
「緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街」——多様な都市機能が集積したコンパクトシティ「麻布台ヒルズ」が2023年11月に開業した。この街のコンセプトは、〝Green & Wellness〟。デベロッパーである森ビルは、自然と調和した環境の中で多様な人々が集い、より人間らしく生きられる新たなコミュニティの形成を目指したこのプロジェクトを「ヒルズの未来形」と銘打った。そのメインストリートが、東西を貫く「桜麻通り」。そこでは、有機的にうねるような格子状の構造体「ネットフレーム」が持つ特徴的な存在感が、訪れる人の目を惹きつける。元請会社である大林組から依頼を受け、ガーデンプラザBにおける意匠性の高い立体曲線を実現したのは、日鉄エンジニアリングの「一気通貫」の技術力だった。

S.T
建築本部 設計部
鉄構設計室
設計担当として、鉄骨の取り合いや構造計算等を担当。設計の観点から実現に向けた課題抽出・提案を行う。設計・作図だけではなく、施工時の検討も担う。
Y.A
建築本部 プロジェクト部
鉄構工事室
工事担当として、製作・施工に関するプロジェクトマネジメント(全体管理)を担当。安全・品質・工程・コストを総合的に考えながらプロジェクトを実現へと導く。
I.H
都市インフラ営業本部
鋼構造営業部 鉄構営業室
営業担当として、施主・元請会社らとの交渉・調整を担当。プロジェクトを成功に導くために、チーム全体を取り纏める。
Project-Overview意匠と構造を両立させる「技術」のちから


「このプロジェクトは日鉄エンジニアリングの強みが活かせる案件だ。デザインを初めて目にしたときに、そのような直感がありました」。営業としてクライアントからのプロジェクトの説明を受けたときの印象を、営業担当のI.Hはこう語った。麻布台ヒルズのネットフレームは、見た目の美しさだけでなく、建物の主要構造体としての機能も持ち合わせている。日本ではあまり見られない、自由な曲線を描く構造体。その実現には、設計から製作・工事に至るまでの高い総合力が求められた。「難易度が高いからこそ、数々の特殊鉄骨案件を手掛けてきた当社の知見を活かせるという確信がありました」とI.Hは繰り返し話す。
設計を担当したS.Tは「一般的な建物の構造体は柱・梁が水平・垂直方向に交わり形作られますが、ネットフレームは、すべて曲線で構成されています。しかも、曲線の曲率は部位によって一つずつ異なる。中でも、接合部の設計は、複雑な力の伝達に耐えうる仕様が求められました」とこのデザインの難しさを解説する。麻布台ヒルズのネットフレームは鉄骨構造体を「GRCパネル」と呼ばれる外装フレームで覆っている。そのため、鉄骨構造体は、「GRCパネル」の形状に添うかたちで緻密な設計をしなければならない。パネル受けの数は3600個に及ぶ。そして、その有機的なデザインゆえに、一つひとつが独自の形状・寸法を持っており、それに呼応して、鉄骨に付帯する各部材においても、ミリ単位での調整が必要とされたのだ。

KeyPointデザインを実現可能にした抜かりない段取り
デザインの一部に変更が生じると、関連する構造体にも影響が及ぶ。自由度が高い形状が故に、調整には柔軟性だけでなく、高度な情報処理と全体を見渡した対応力が求められた。
複雑な設計条件の中で、プロジェクトの進行を支えたのが営業・設計・工事の三位一体による綿密な連携。抜かりなく、スピード感を持った日鉄エンジニアリングの総合力が最大限に価値を発揮した。本プロジェクトでは、検討の初期から鉄構設計室・S.Tと鉄構工事室・Y.Aが参加。従来、営業・設計が主で対応する構想段階から、工事が参加し、綿密な検証と計画を積み上げてきた。このような体制を構築することで、スピード感を求める顧客の要望に対応していったのだ。
デザインの変更に合わせた修正図面を製作する際に要となったのが、コンピュテーショナルデザインにより複雑な構造を高速に解析・調整するアプローチ。設計段階では、一般的に平面・立面・断面の3つの図面から数量や工数を拾い積算を行うが、麻布台ヒルズのネットフレームでは、3図面が統合された三次元モデルから積算を行うかたちをとった。これにより、図面作成と並行して予算感やスケジュール、ディテールに至るまでの「全体感」を加味した試算をリアルタイムで顧客に提示することができた。「この規模の案件では、変更の都度、平面図面から数量を拾っていたらとても間に合わない。そこで、早期から三次元モデルを導入し、構造・寸法・納まり・工法などの整合性、見積もりに必要となる概算数量を適宜、確認できる体制を整えました。さらに精度を高めるために、その概算にY.Aさんの肌感も組み合わせることで、常に当初見積もりから前提条件に変更が生じていないか、確認をしていました。」営業としてプロジェクトの採算性を管理していたI.Hはそう語る。
モデルは、施工中の確認作業でも活かされた。製作した鉄骨にタブレットをかざす事で接合部や加工のズレを検証できるAR環境を実現。事前に三次元モデルを用意したことで、こうした技術の活用も可能となり、困難が予想された確認作業の効率も格段にあげることができた。
Breakthrough「一気通貫」が建物と未来へ導く


建物の構造を支える鉄骨工事は、全体工程の“軸”となる存在と言える。特に麻布台ヒルズのネットフレームは、複雑な構造を持つ建物全体を象徴する重要なエリア。「完成に至るまでには、社内だけでなくプロジェクトを共有する各社との連携も重要でした」とI.Hは語る。
日鉄エンジニアリングは、鉄骨製作の自社工場を保有していない。パートナーの製作工場に部材を製作してもらう必要があるのだ。「いきなり設計図を渡しただけでは実現可能か工場側で判断できない事も多々あります。そういった場合でも、工場製作や現場施工の事も頭に入れた上で、当社が情報を整理し、かみ砕き、製作用の図面を用意する事でパートナーの製作工場に具現化してもらえます。」というのは、実際に工場に赴き工程を管理していたY.Aの言葉。
設計段階から部品の加工法や製作スケジュールを含めたやり取りを重ねたことで、日鉄エンジニアリングは製作工場・現場作業員とも良好な信頼関係を築き、難易度の高い課題を順調にクリアしていった。「鉄骨の製作・施工を考えた上での設計ができる。設計・工事で一体となって連携しているからこその当社の強みだと再確認するプロジェクトでした。」S.T.は言う。
営業・設計・製作・工事が一貫して協働し「一気通貫」を実現する組織力こそ、日鉄エンジニアリングの最大の強み。それが、プロジェクトを共有する各社と建物へと“波及”したことで、構造美と技術力の結晶とも言える麻布台ヒルズのネットフレームは完成された。プロジェクトを振り返り「社内全体で横断的に連携を取りつつ、顧客からの窓口を一本化することで、顧客や協力会社に対して、様々な提案を迅速に行う事ができた」とY.Aはプロジェクトの成功要因を分析している。

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